RemoteRegion@AquaTotto

『世界淡水魚園水族館 アクア・トトぎふ』での記録。

企画展 美しきカエルの世界 〜中南米のカエルたち〜

はじめに
カエルの仲間は、局地を除く世界中のさまざまな地域に生息しており、その種数は7,000種にもおよびます。
今回の企画展はその中から生物多様性スポットとして知られている中南米にすむカエルを取り上げました。
日本と全く違う環境にくらすカエルたちの姿や生態は、私たちが普段目にする
カエルたちとは全く違っています。
今回の企画展が、皆様の中のカエルのイメージを、多様なものに変えてくれることでしょう。

〜不思議なカエルの世界〜 森の忍者透明ガエル内臓が丸見え!?

フライシュマンアマガエルモドキ

 

美しき夜のカエル
アカメアマガエル / トラアシネコメアマガエル

カエルの体の色
毒をもつカエルの多くは派手な体色をしており、それを外敵に見せることにより自身に毒があることを警告していると考えられています。
一方、周りの色と似た体色を持つことで風景に隠れる種類もいます。これにより外敵から身を守り、また気付かずに近づいてきた獲物を捕らえることができます。ヤドクガエルの仲間の持つ派手な体色は、これまで毒をもつことをアピールするためと考えられてきましたが、最近では派手な体色と模様は、遠い距離からは周囲の風景に溶け込み、カモフラージュの役割もあるという研究報告もあります。

ミルクフロッグ

個性豊かなカエルたち
ヒラタコモリガエル / マガイナンベイウシガエル / マルメタピオカガエル / リオバンバフクロアマガエル

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〜ヤドクガエルの仲間〜 熱帯雨林の宝石たち
アイゾメヤドクガエル / マダラヤドクガエル

毒で身を守る
多くのカエルは、外敵から身を守るために皮ふになんらかの毒を持っています。
中南米に生息するヤドクガエルの仲間は、強い毒をもつことで知られています。この毒は現地に生息するアリやダニを食べることにより作られます。毒の種類や数は種によりさまざまで、これまでに200種類以上の毒が確認されています。なかでもモウドクフキヤガエルの持つバトラコトキシンは、わずか0.00001gで人を一人死に至らしめるほどで、動物界では最も強い毒とされています。またアマゾンでは、皮ふではなく鼻先にある小さな骨性の突起を外敵に突き刺し、毒を注入する蛙も見つかっています。このようなカエルのもつ毒は、外敵に襲われたときに、相手をひるませるのに役立つようです。

モウドクフキヤガエル / ファンタスティカヤドクガエル / ミイロヤドクガエル

愛嬌のあるカエル
アマゾンツノガエル / チャコガエル

世界中のカエルが減少しています。
その大きな要因のひとつとしてカエルツボカビ症という感染症があげられます。

カエルツボカビとは?
真菌の一種で、1980年代後半に明らかにされた病原体です。
1970年代から1980年代にかけて、原因不明のカエルの大量死が世界で報告されていましたが、それらの多くがカエルツボカビ症によるものだったと後になって判明しました。原因が特定された後も、野外での感染を防ぐことは難しく、カエルツボカビにより絶滅した両生類は200種以上とされています。特に被害が大きいのは中南米やオーストラリアで、地域的な絶滅や、全体の個体数が10%未満に激減した地域なども確認されています。

なぜ広まった?
人間の活動により世界各地に運ばれ、大きなダメージをもたらしたと考えられています。
カエルツボカビの起源については、1番古いカエルツボカビがアフリカの標本から見つかっていることから、アフリカ起源とされていました。しかし、世界中の研究者による調査の結果、起源は東アジアで、そこにくらすカエルはカエルツボカビに対して高い抵抗力をもち、感染する確率が低いことがわかりました。

 

おわりに
今回展示したカエルたちは、中南米にすむ種のうちごくわずかではありますが、派手な模様をしたカエル、水中生活に適応したカエルなど、その多様な世界の一部を皆様にご覧いただきました。
中南米地域のカエルたちは生息環境の破壊や感染症の蔓延などから、その数を減らしています。パームオイルやカカオなど日本人も利用しているものを生産するために森林が伐採されるなど、この環境破壊は私たちの生活と無関係ではありません。熱帯雨林への影響に配慮した商品を選択し、購入するなど、今回の企画展を通して、さまざまなカエルたちがこれからも暮らしていけるよう、カエルが暮らす環境についても考えていただけましたら幸いです。


アクア・トトぎふ 企画展『美しきカエルの世界』(2019.4-7)