RemoteRegion@AquaTotto

『世界淡水魚園水族館 アクア・トトぎふ』での記録。

ハイギョのマユ

f:id:hikaru-remoteregion:20190814001049j:plain

ハイギョの夏眠
アフリカ大陸に生息するハイギョの中には、泥の中に潜り、夏眠をする者がいます。
ハイギョの生息する環境では、雨季と乾季があり、乾季になると周囲の水が干上がってしまうことがあります。そのため、アフリカ大陸に生息するハイギョの中には、水が干上がってしまう前に、泥の中に潜り、自らが出した粘液でマユを作り、夏眠をします。そしてこの状態で数ヶ月もの間、乾燥に耐え、再び雨季になり水で満たされるのを待つことができるのです。この時、ハイギョの体内では通常時とは違い、後述するような適応変化が起きています。

 

f:id:hikaru-remoteregion:20190814001052j:plain

f:id:hikaru-remoteregion:20190814001056j:plain

夏眠中のハイギョのからだ

呼吸
普段はエラと肺を使ってガス交換(呼吸)をしているのに対して、夏眠状態になるとガス交換器官が肺のみに切り替わります。
※ネオケラトドゥス(オーストラリアハイギョ)は生息地が干上がることはないため、肺の機能はあまり発達しておらず、夏眠することは出来ません。

体内の水分を保つための仕組み

窒素代謝
水中で生活している通常時は、体内での老廃物としてアンモニアを水中に排出しています。夏眠に入る乾季になると、アンモニアの排出が止まり、より毒性の少ない尿素を合成するようになり、精製された尿素は体外に排出せずに体内に蓄えられます。その蓄積量は1年間夏眠させた場合、体重の1%重量に達した実験結果があります。

腎臓での水の再吸収
ハイギョには他の魚類には見られない、水輸送に関わるタンパク質が発現することにより、腎臓で水分を再吸収する仕組みはあることが明らかとなりました。しかもこの仕組みは、水中生活時には発現せず、夏眠状態になると発現することがわかってきました、このような体の水分を保つ仕組みは、通常、陸上で生活する動物に見られるものです。水がなくても生きていけるハイギョは、このような仕組みを進化の過程で獲得していったと考えられます。

 
アクア・トトぎふ 企画展『世界のハイギョ』(2015.12-2016.4)